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2003. 11. 28
深海へ拡大する漁業に警鐘

【スイス・グラン発】 “商業的に利用されている魚種も含め、深海の豊かな生物相は、急激に拡大する深海漁業−その多くが規制されていない−によって大きな危機にさらされており、公海での漁業から、今すぐ保護されねばならない”。これは、WWFおよびトラフィックオセアニアが発表したレポートの中で示した主要な調査結果である。

 発表されたレポート『Managing risk and uncertainty in deep-sea fisheries: lessons from Orange Roughy(深海の漁業に関するリスクと不確実性の管理:オレンジラフィー*1からの教訓)』によると、沿岸の漁業資源の減少と、水産物の需要の増大によって、深海における漁業が急激な広がりを見せているという。世界のトロール漁業の40%以上は、200メートル以深の深海で行われている。レポートでは、急激な漁獲量の増加の末に、この4年間で商業的に成り立たないほど減ってしまったオレンジラフィーの事例を明らかにしている。深海への漁業の拡大は、例えば深海の海山*2のような、発見されないまま絶滅してしまう種が多くいかねない場所にまで影響を与えている。WWFとトラフィックは、こうした海域を守るためには、国連レベルで厳しい基準を緊急に採用し、効力を発揮させることを求めている。

 この声明は、12月1日〜5日、国連食糧農業機構(FAO)がニュージーランドで開催した深海漁業に関する主要国会議「Deep-Sea 2003」に先だって発表された。「25年の間に、オレンジラフィーは100万トン以上漁獲された。これは持続可能なレベルではないことは明らかであるし、資源管理も十分に機能してこなかった。この間のオレンジラフィー漁には、アメリカ市場への主要な供給元となっているニュージーランドやオーストラリアをはじめ、多くの国が関与している」と、トラフィックの上級水産アドバイザーであり、レポートの執筆者の一人であるアナ・ウィロックは指摘する。

 レポートに掲載されているニュージーランド、オーストラリア、南インド洋、北東大西洋に関するケーススタディは、オレンジラフィー漁の管理が、さまざまな理由で失敗したことを示している。それらはいずれも、緊急の対処が必要なものばかりである。例えば、オレンジラフィーの生物学的特性に関する知見が少ないこと、資源の評価モデルが不適切であること、漁船の漁獲能力の制限に失敗したこと、厳しい管理の決定を下す政治力が欠けていること、モニタリングと管理と取り締まりが効果的でないことなどである。

 深海の生物は、寿命が長い一方で、成長が遅く、成魚になるまで多くの年月がかかる種が多いことが知られている。この生物学的特性により、深海生物は一般に、強い漁獲圧に対してきわめて脆弱である。オレンジラフィーは、特にこの傾向が強く、その寿命は150年以上に及び、性成熟するまでに25年かかる。そのため、オレンジラフィーは過剰利用からなかなか回復しない可能性がある。深海の生物は、沿岸の生物に比べてより早く枯渇状態に至り、また、回復にはより多くの時間が必要だとの見方が一般的である。

 WWFとトラフィックのレポートは、オレンジラフィーから得た経験が、将来の深海漁業を開発するにあたっての貴重な教訓となることを示している。WWFオーストラリアの水産担当であり、同じくレポートの執筆に携わったキャサリン・ショートは「オレンジラフィーのように商業的に成り立たなくなるほど資源が枯渇したり、将来、深海漁業によって他の種が絶滅するような事態を避けるためには、深海の生物および生息地の管理に、より厳しい予防原則を採用することが欠かせない。今後の深海の資源開発は、透明かつ充分なリスク評価を伴うものであることを必須条件とすべきである」と話している。

*1オレンジラフィー(キンメダイ目ヒウチダイ科)
【学名】Hoplostethus atranticus
【英名】orange roughy, deep sea perch
オーストラリア南部、ニュージーランド、チリ沖など南太平洋および大西洋の、水深800〜1500メートルの深海に生息する。ヒウチダイ科の中で最も大型になり、全長は最大で55センチ以上。主に食用として、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドで消費され、一部は日本へも輸入される。またオレンジラフィーから抽出した油が化粧品の原料として日本へ輸入されている。

*2 オレンジラフィー漁は、海山に関係が深い。海中に存在する山脈は、生物の多様性の高さと、固有種の多さが特徴である。北西大西洋の海山に関して集められたデータは、下記ウェブサイトで見ることができる。

http://www.ngo.grida.no/wwfneap/Projects/Reports/Seamount_Report.pdf

■本件に関するお問い合せ:
Peter Bryant, WWF Endangered Seas Programme, tel.: +41 22 364 9028, pbryant@wwfint.org
Olivier van Bogaert, WWF International Press Office, tel.: +41 22 364 9554, ovanbogaert@wwfint.org
Maija Sirola, TRAFFIC International, tel.: +44 1223 277427, maija.sirola@trafficint.org

■レポートのダウンロード
『Managing risk and uncertainty in deep-sea fisheries: lessons from Orange Roughy(深海の漁業に関するリスクと不確実性の管理:オレンジラフィー*からの教訓)』は、下記ウェブサイトからダウンロードできます。

http://www.traffic.org/news/press-releases/deep_sea.html

http://www.panda.org/news_facts/publications/marine/index.cfm

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