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![]() 2008年1月31日
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©Nguyen Thi Bich Hien /TRAFFIC Southeast Asia |
ピグミースローロリスとは
この事件の中で違法に取引された、ピグミースローロリスN. pygmaeus が属するスローロリス属 Nycticebus spp. は、南・東南アジアの森林に住む夜行性、小型の霊長目の動物である。大きな丸い目を特徴とする。同属にピグミースローロリスを含む3種が知られているが、いずれの種も区別なく一般的な呼び名としてスローロリスと呼ばれることが多い。スローロリス属の野生の生態は不明点も多いが、日本でペットなどとして取引されてきたほか、生息地域では伝統薬などとしても利用されている。IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストではピグミースローロリスがVU(危急種)にリストされ、絶滅が危惧される種でもある。
ワシントン条約による国際取引規制の強化
2007年6月に開催された第14回ワシントン条約締約国会議で、スローロリス属Nycticebus spp.は、商業目的での国際取引が原則的に禁止される条約附属書Tへ、それまで掲載されていた附属書Uから移行することが可決された。種の存続の危機を国際取引の脅威から守ろうとする国際的な動きである。
ワシントン条約改正に伴う日本国内の法改正
すでに日本では2005年より、ペットとしてスローロリスを海外から持ち込むことは認められていない。これは感染症予防法による規制である。エボラ出血熱やマールブルグ病など、霊長目と人に共通する感染症が国を超えて媒介されるのを防ぐため、指定を受けた試験研究機関又は動物園が、指定された国・地域から輸入するもの以外では、生きた霊長類を輸入してはならないこととなっている。加えて2007年のワシントン条約附属書の移行に伴い、締約国である日本でも、国内で同条約を施行する役割を担う種の保存法を、条約の附属書改正発効(同年9月13日)と同時に改正した。これにより、スローロリス属を国内で取引することも原則禁止され、条約適用以前に取得した個体や国内で繁殖した個体の取引には登録が必要となった。輸出入の規制だけでなく、種の保存法で新たに加わったこの国内取引規制も、今回の事件では問われている。
多発していた税関での摘発と国内市場の存在
複数の法律により規制・監視の対象となってきていたスローロリス属であるが、東京税関からの報告によると2004年から2007年にかけ、東京税関の管内で密輸摘発が急増している。一度に数十頭の動物を持ち込んだケースもみられ、これらの摘発は違法に輸入された個体を国内で取引する市場の存在の可能性を示唆している。今回の事件でのピグミースローロリスの取引価格は1頭10〜18万円と報道されており、また国内取引規制以前の2006年にトラフィックイーストアジアジャパンが調べたところ、ピグミースローロリスは15万円から38万円という価格で販売されていた。
購入者にも問われる違法行為
今回の事例では、警視庁が受け取り側である購入者についても書類送検する方針であると報道されている。種の保存法(第12条)では、違法に販売して利益を得る業者だけでなく、譲受けや引取り(もらう、買う、借りるなど)といった受け取り側の行為も同様に規制している。つまり購入する側にも、法規制の正しい認知とその遵守の義務がある。市場に流通する野生生物がすべて合法なものであると鵜呑みにしたりせず、購入する側でも、買おうとする動物の売買が違法行為に当たらないことを確認し、購入者サイドから違法取引を排除していくという厳格な姿勢をとることは必須条件なのである。
さらに種の保護を考える
高額でもその動物を買いたいという需要がある限り供給が喚起されるだろう。野生生物をペットとして飼いたいとほしがる手が、遠く離れたアジアの森に伸び、野生生物の過剰な捕獲や取引を促す一要因となっている。生活の様々な場面で野生生物を購入する消費者にも、法規制に関してはもちろんのこと、購入しようとするその種の「生息国での保護の現状」や「種の生息状況」まで考えた、賢い消費選択が求められる。
(2008年1月31日更新)
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