2006年2月10日
「キャビアの輸入規制を強化して、
ワシントン条約の決議実行を求める要望書」を経済産業省に提出
2006年1月3日、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」(以下、ワシントン条約)の事務局は、条約決議12.7(第13回ワシントン条約締約国会議で改正)にもとづき、すべての生息国・輸出国がその輸出や漁獲割当が持続可能であるとの情報を提示しするまで2006年の輸出割当を出さないと発表した。また同時に、輸出国と輸入国の両方が、キャビアの取引が合法的で持続可能であることを確保するという、ワシントン条約締約国会議で合意した義務を果たすよう強く主張しています。
野生動植物の取引を監視するトラフィックネットワークは、世界的なキャビアの違法取引が依然として存在することを憂慮しており、以下のような問題指摘と提案をおこなっています。
日本においても不正なキャビアの国際取引を排除するよう要望いたします。トラフィックとしては、輸入大国である我が国がワシントン条約の執行を適切におこない、キャビアの持続可能な取引を図っていくことが重要であり、条約締約国としての責務とも考えています。
キャビアの輸入規制を強化して、
ワシントン条約の決議実行を求める要望書
トラフィックイーストアジアジャパン
代表 清野比咲子
キャビアは、トリュフ、フォアグラと並び世界の三大珍味のひとつとされている。キャビアは、太古から生息する古代魚であるチョウザメ目(チョウザメ類とヘラチョウザメ類)の卵の塩漬けの名称として広く知られている。チョウザメ目は27種に分類され、アジア、ヨーロッパ、北米の沿岸や内水面に生息する。しかし、カスピ海など生息域の衰退や違法漁獲、違法取引のために資源の減少が懸念され、回復の兆しはみられない(添付資料参照)。
漁獲と国際取引の規制
1998年からチョウザメ目全種がワシントン条約の附属書TまたはUに掲載されている。また、2002年の締約国会議で、「チョウザメ目の保護と取引」についての決議を採択し(決議12.7、第13回会議にて改正)、チョウザメの漁獲割当と輸出割当の設定、ラベリングの実施などを関係国に求めている。ラベリングは、キャビアの原産国も輸出国も、内容量や国内外取引を問わず、再利用不可ラベルを使って貼付しなければならないとしている。
更に、昨年秋以降、事務局は生息国及び輸出国に対し、漁獲が資源に悪影響をおよぼさないことを示し、さらに管理計画を提出するよう求めている。
しかし、2005年12月末時点で事務局に報告されていない。このため、2006年1月、ワシントン条約事務局は、輸出国がチョウザメの持続可能な漁獲についての情報を提出しないかぎり2006年の輸出割当を認めないと発表した。今回の事務局の決断は、これまでの輸出国の許可書による国際取引管理ではなく、事務局が決議12.7(改正)に基づいて、生息国や輸出国が適切な情報を提供しない限り輸出割当を認めないという一層厳しい方法による取引規制を行っているものである。
世界と日本のキャビア取引
キャビアは高額で売買され、欧米の小売市場では100gが600ユーロ(約10万3,200円)で販売されている例がある。ワシントン条約事務局によると、キャビアの合法取引額は、年間世界で約1億米ドル(約117億円)である。
1998〜2003年のキャビアの輸入国と輸出国を調べた(表1)。主な輸入国は、EU、米国、スイスで、世界のキャビア取引の約85%を輸入している。また4番目は日本である。一方、輸出国は、イラン、ロシアの順である。
表1 キャビアの主な輸入国と輸出国、1998-2003
主な輸入国 |
主な輸出国 |
| EU |
550 t |
イラン |
430 t |
| (フランス |
217 t) |
ロシア |
285 t |
| (ドイツ |
186 t) |
カザフスタン |
85 t |
| 米国 |
295 t |
中国 |
27 t |
| スイス |
168 t |
ルーマニア |
23 t |
| 日本 |
119 t |
アゼルバイジャン |
15 t |
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|
ブルガリア |
13 t |
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米国 |
13 t |
(出典:CITES Trade Database,1998-2003)
提案
ワシントン条約の決議で求められている輸入国の規制強化を行うことは、条約を適正に執行するうえで非常に重要である。すでに米国、EUが対応しているなか、日本だけ何ら措置を行わないのは締約国であり輸入国としての責任を果たしていない。
輸入国として、すべての輸入が合法的な出所であることを確保し、国内の加工・再包装工場の登録システムを設置し、再包装して国内販売されるものにラベルをつける規則を施行することも含めた条約の決議12.7(改正)を満たすよう、強く要請する。
キャビアにラベルをつける制度を効果的に実施することは、消費者が適正なキャビアを見分けることができるようになり、我が国がチョウザメの違法取引に手を貸していないことを証明することにもなる。
ついては、以下の点について、条約決議に基づく輸入国としての規制を行うよう求める。
・ 輸入に際して、水際における一層厳格な管理を行うための輸入の規制を整えること。
・ 経済産業省は、キャビアの輸入にあたって、ワシントン条約の許可書を確認するとともに、製品に所定のラベルをつけたものでなければ輸入を認めないよう、国内の輸入規制を整えること。
・ 輸入加工業者は、ラベルがついたもの以外は購入しない旨を仕入先に申し入れること。
以上
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参考資料
キャビアとは
キャビアは粒の大きさによって名称が異なり、それぞれ採取するチョウザメの種類が違う。ベルーガは、オオチョウザメHuso huso の卵でもっとも貴重とされている。オオチョウザメは寿命が100年程で、重量は2 t 以上に達する。またオシェートラは、ロシアチョウザメAcipenser gueldenstaedtii やペルシャチョウザメAcipenser persicus から採取される。さらに、セブルーガはAcipenser stellatusから採取される。
世界のキャビアの約80%はカスピ海産であり、これらが質が良いとされている。その他には、アムール川、ダニューブ川、黒海、アゾフ海などで採取されたものが取引されている。
日本の利用状況
日本は世界有数のキャビア輸入国である。世界におけるキャビアの主な輸入国は、2001、2002年ともに、米国、ドイツ、フランス、日本の順であった。日本の輸入量は、2001年に少なくとも約32 t (世界輸入量の13.9%)、2002年に16 t (11.3%)、2003年15 t (11.8%)であった(図参照)。種としては、ペルシャチョウザメ Acipenser stellatu、ヘラチョウザメPolyodon spathulaが多い。これらは、ほとんどが野生個体から採取されたものであった。
一方、日本の市場での販売価格を調べたところ、セブルーガ10 g 当たり1,400〜4,390円、ベルーガ10g当たり1,300〜13,300円で販売されていた。
世界の違法な取引
トラフィックの調べでは、1998〜2003年のあいだに、EUとスイスに約720 t の違法なキャビアが輸入された。また、2000〜2005年にはヨーロッパで約12 t の違法キャビアが押収された。違法キャビアがみつかった国は、ドイツ(2,224 kg)、 スイス (2,067kg)、 オランダ (1,920 kg)、 ポーランド (1,841 kg) 、英国 (1,587 kg) などであった。
CITES事務局によると、キャビアの合法取引額は年間世界で約117億円である。また違法な取引はその5倍(約585億円)にのぼると考えられている。
米国とEUの規制状況
米国は、ベル−ガの世界取引量の約5分の3を輸入していた。しかし、2005年9月にはカスピ海地域の、また同年10月には黒海からのベルーガの貨物の輸入を禁止した。米国でベルーガは1ポンド約2000£(10g約9,100円)で売られていた。
また、条約決議に基づいて実施する必要のある、適正な管理のもとにつくられた製品であることを示すラベルをつける制度も導入が遅れているが、EUは2006年3月に新しい規則を制定してキャビア取引のラベルづけを義務化することとなっている。
以上
(2006年2月10日更新)
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